満潮から1時間過ぎたころ薩川湾の入り口・デリキョンマ岬の赤岩にたどり着く。赤岩(ハァ石) は朝露に濡れ、白浜に赤く輝きその存在を際立たせていた。
外洋近くの海辺は大潮の満干の高低差が2mを超える。また台風の大波による砂の堆積移動は、訪れるたびに浜の姿を変えていた。
波打ち際に流木を2本立て潮の動向・高低を確かめる。
赤岩裏に3mほどの琉球松の流木が漂着していた。砂浜に映える赤岩の鮮やかさと松の根元に残された生命力の力強さにこころ動かされ、我を忘れて筆が走り2時間ばかり時が止まった。
昼食とスケッチを2枚描き、上陸から4時間後の干潮から満潮に変わるタイミングで、デリキョンマ岬から次なる浜へと漕ぎ出す。
野宿において「焚き火」と「暖かい飲み物」は必要不可欠。
雨が降ろうが風が吹こうが「焚き火」さえあればいかなる場所も充足のパラダイス・ホテルに。赤い熾き火に自分を見つめ、家族や友との過ぎ去りし日々、そして今日を想う。熾き火が燃え尽き、明日への希望を胸に寝床へと移るころ、天空にオリオンとシリウスが光り輝く。
ながく南の島をシーカヤックで旅・充足の日々を続けていると、月の形で潮の満干の時間と潮位の高さ、太陽の角度でだいたいの時間が判断できるようになってくる。
潮の満ち引きも含め、夜空に輝く星座を6時間ほどながめ続けると、[地球の自転]4分の1を体感している事に気がつく。
真実は旅にあり 知ることの よろこび
無人島タープ・キャンプに欠かせない「焚き火」はその旅人の数と、焚き火奉行・担当者によって常に変化する。
総勢8人でサバニに乗り無人島へ航ったとき、焚き火用に集めた流木から数本を選び機能的焚き火台をわずか3分で砂浜に組み上げた。
使い勝手はどうだろう?って…、メチャ すげぇ〜いいに 決まってるだろう!
イモは濡れた新聞紙で包みアルミホイルを巻いて、焚き火の火床下の砂地に埋め蒸し焼きに。トマトソースをベースにソーセージ&ひき肉とタマネギみじん切りでソースを煮込みつつ、海水を加えたお湯でパスタを茹で上げる。
食後の洗い物や温かい飲み物用に、焚き火横で大量の湯を沸かしながら、イモが煮えたら焚き火の上に置いて水分を飛ばし焼き芋状態にして、ホクホク・スイートポテトのデザートの完成をみんなで焚き火を囲みながらちょくちょく味見しながら待つ。
楽しいにきまってるだろう、真っ白い砂浜で、ワイワイがやがや・ミートソース&粗挽きソーセージ・パスタ、食後のスイートポテトにコーヒー&ラム酒入りミルクティーを、沈む真っ赤な夕陽の景色を眺めながらの夕食ディナーの楽しさ…だぜ。
想い出すだけでウキウキしてくるぜ、まったく!
えっなに、白い砂浜での直火に何か問題でも? ん、スプーン一杯の土には200万のバクテリアが…、オメェー顕微鏡で見たことアんのかヨ200万のバクテリアを!焚き火台使っていい子ぶってんじゃね〜よ。まったく、焚き火台使用は悪い事ではないが、焚き火跡の後始末ぐらい当たり前だろう!
それよりも、台風の神様が一発来たら、無人島の砂浜の1〜2mの深さなんか荒波のパワーでアッという間にひっくり返されるのだから。〜と、どこかの無人島・放浪者が、焚き火台よいこの会信奉者たちの個人的価値観をこれ見よがしに他者にみせつけるエセ善行為に怒りまくっていた。〜ことを想い出した。
想像(創造)力 と 遊びごころ そして自然に対する己の責任感だよ、大切な事は。
スマホのピンポイント天気予測と雨雲レーダー&ウインディーを駆使して天候情報を読み取り2~3日好天が重なる初日、意気揚々とお昼の少し前に、我が家を仕事そっちのけで極楽野営地20数km先の浜比嘉島の浜辺目指しビアンキ君と脱走を決行したのだった。
キャンプ道具の総重量7.8kgを背中に担いだ小学57年生小僧は、10km過ぎたあたりからその重さがケツとサドルの衝撃に違和感を感じ始めていた。途中の海中道路18kmを過ぎたあたりで出発前夜のトレッキング用超軽量リュックを、長年使い慣れ親しんでいたキャンバス地の800gリュックにキャンプ道具を詰め替えたことを少し後悔していた。
途中、休憩がてら食堂で30分ばかり昼飯を食べ、浜辺に着いたときには午後2時を少し過ぎていた。日没6時までの4時間でキャンプの準備に取りかかる。設営あと、自転車で近くの公園に水汲みに出かけ、ついでに天プラ屋で早めの夕飯を食べる。キャンプ地に戻ると南風はおさまり、正面の東の空は濃い紫色になって夜の帳が落ち始めていた。
暗くなる前にケトルに水を汲み入れカマドに火を熾し夜の闇に備える。しばらくして背後の西の空一面が真っ赤な茜色に染まった。
何はともあれキャンプ道具を担ぎ1時間半で20kmを走破し極楽・キャンプの浜辺に着いたときにはケツの痛みも忘れ、そのあと1時間弱でのタープ&寝床と焚き火床設営完了という結果は、身近にできる外遊び・ワンナイト焚き火キャンプの新たな発見につながったのだった。
シーカヤックで無人島へ、シンプルなタープ・キャンプこそ快適
ソフトハウス的フレームテントもいいが太陽照りつける日陰のない南の島の浜辺では、テント組み立て終了時一瞬にして熱帯サウナ・ルームと化してしまう。
タープを張る時は風の向きを頭に入れ、ベースの張り綱を支柱となる流木やポールなどで仮止めする。4角をペグ・ダウンしてパラダイス・ホテルの基本的設営はとりあえず準備完了。後は雨風・太陽の直射日光に対して風が通るように角やセンターを流木で支え上げ、細引きを結んでテンションをかけしっかりと固定する。
雨風が強いときには低めに、陽射しが強い場合は風通しをよくするためタープ本体を高めに設営するといい。また雨風は吹き込む方向が絶えず変化し、陽射しは太陽の角度で日陰部分が移動するので、そのつどタープの上げ下げが必要になる。そのため張り綱の支柱の固定以外は常に変化に対応できるようクイックリィーに仮止めにすると便利だ。
上図のように流木なければパドルを使い、日陰を確保し風を通して快適なタープを…。あまり勧めたくはないが流木なければ仕方がない。なぜならパドルはカヤックの大切なエンジンの一部だから。予備パドルがあったとしてもそれは航海中のパドル・トラブルのための物。カッコつけてる場合じゃないのだヨ、海は。
ゴトクやケトル・鍋が無くてもホーロー・カップひとつあれば…
オフロード・バイクで関東近辺の林道や海辺を走り回っていたころ、砂浜や河原の砂地でよく焚き火を楽しんだ。その時代はツーリングが目的で、キャンプ道具はジッポーのライターにホーローカップ、マグライトにアーミーナイフとレザーマン。それでも知恵と工夫でイモを砂に埋めて蒸し焼き、湯を沸かしてお茶を淹れていた。
限られた材料と手持ちの道具で、シンプルでかつ機能的な快適空間を組み上げるには、それなりの知恵と発想、そして「遊び心」が必要となる。
タープ・キャンプはそこが面白い。