2020年2月29日土曜日

創意工夫と遊び心


必要は発見・発明の母 


  シーカヤックの旅の途中、無人島にてガスバーナーの燃料が切れたことがあった。
 波風強いその島には流木の漂着が少なく、いくつかの枝と限られた数本の小枝4~5本だけ。
 ナイフと缶切り、そしてゴミとして持っていたパイナップルの空き缶を使い、カンカン・バーナーを即興で作り上げその場を凌いだのだ。
 ビクトリノックスのアーミー・ナイフには小さなノコギリやハサミまで付いており、ナイフの刃も大小2本も備えられていた。その小さなナイフの刃で底の部分を三角の穴があくように、刃を差し込み滑らすように2辺を押し切り、底の部分がついたまま三角部分を中に押し込む。そして缶切りに付いていた栓抜きの刃で、缶の上下に空気口となる穴をペコペコと等間隔で開けていく。制作時間たった5分でカンカン・バーナーの出来上がり。
  一度小さな小枝をポキポキ折って缶いっぱいにして、三角の火口から着火して熾き火を作る。あとは短く切った細い枝を上から縦に入れたり、三角の火口から長いチョッと太い小枝を2本ばかり突っ込んでおくとそれが元火となって次々と熾き火が出来て燃え続けるのだ。なんと親指くらいの太さで長さ1メートルの小枝2~3本で、一人分1合のご飯を15分で炊き上げ、2杯分のみそ汁を作り、残った熾き火で一枚のシャケの切り身を焼き、残りの火で1リットルのお湯を沸かせて温かいお茶が飲めたのである。微妙な火力調整はブラ下げたケトルや鍋を小枝にぶら下げ、火床からの遠近調整で保温や強火など工夫したのだ。

 その体験以来、私のシーカヤックの旅から、ガスやガソリン・オイル系のバーナーの類いが姿を消え、大きめのフルーツ缶と着火材が旅の共となったのだった。
 ひとり旅、「必要は発見・発明の母」要は創意工夫と遊び心、実践による「経験と知恵」これ大切! ね
ひとり旅すると 余計なものがひとつづつ無くなるって  
オモロいぜ!






2020年2月22日土曜日

寒山人

あなたの魂よ 永遠に

  バブル真っ只中の1980年代初頭、名著「アウトドアライフ入門」との出会いは、読書嫌いな私を、野宿と焚き火の世界へと導いてくれた。
 その後の私の人生は、野宿と焚き火を中心に歩むこととなり、炎の中に自分をみつめ、身の回りに繰り返される「時代および時の流れ」そのものを見つめることに気付かされたのだった。
 いつのまにか出版界に迷い込み、時代の流れるままに幾つかの雑誌・書籍の創刊・発行に関わることになった私は、毎月〆切前の編集やデザイン仕事に忙殺され、徹夜続きで自分を見失う直前の校了あと、私はひとり、ときに志を共にする仲間と出版社・編集部を抜け出し、2〜3日郊外の河原や渓流、海岸の浜辺へと脱走して、野宿と焚き火を繰り返すのだった。
 迷路をさまよい、気がつけば、私は「アウトドアライフ入門」著者の田渕さんと本やカタログを作り、焚き火を前に、幾つかの時を共に過ごしていた。そして、薪ストーブの世界へと導かれたのだった。
 時が過ぎ、去年の夏の終わり、薪ストーブ会社ファイヤーサイドの今年2020年のカレンダーを作るにあたり、やがて来る「別れ」のレクイエムとして田渕さんから学んだひとつ「ミズナラ」の命の営みと薪ストーブを愛する人々との関わりを、6枚の絵として描き残した。
 とくに7〜8月のカレンダーには、彼の愛した夏の花、ルドベキア(スーザンの黒い瞳)を、部屋に置かれたバーモントキャステイングス社製・デファイアント・アンコールの、火の消えたストーブ・トップに花瓶を置きルドベキアをいっぱいに捧げた。
 火の消えた薪ストーブ炉室には、田渕さんがこの場所を安住の地と決めた雨にけむる「岩根山」をミズナラの灰汁で描き残した。そしてストーブ左上には田渕さんの魂の化身、ウスバシロチョウ(ラテン学名:パルナシウス)を、感謝の涙を流しながら記したのだった。

 あなたの魂よ 永遠なれ あなたのエールに 心からの感謝を。



2020年2月20日木曜日

寒山からの伝言 1

COLD MOUNTAIN MESSAGE 1

ミズナラの枯れ葉散る林の中で
木を切り倒し 手斧で割り 薪を積む


 1997年の秋、翌年冬の薪用にと田渕さんとふたりで、ミズナラとカラマツ、シラカバの3本をチェンソーで切り倒し枝を落として玉切りにする。手斧で割って薪山をつくり延べ3日かけて薪を積みあげた。
 積むとき、両端は城の石垣とおなじ内側にもたれかけるように積むことを教えられた。
 そして汗かく私を見て「薪は我々を2~3度暖めてくれるよ、木を斧で割るときと薪小屋から運ぶとき、そして薪ストーブで燃やすときにね」と、笑いながら手ぬぐいを差し出してくれた。

2020年2月18日火曜日