2022年5月30日月曜日

YAMAHA SR500

 Heart of Loneliness

孤独の旅路

バイクと共に 雨にうたれ 風になる

 

夜明け前、目覚ましの音でとび起き顔も洗わずコーヒーを淹れ
前日に用意したわずかな道具をチェックし、目を覚ます。
部屋を出てバイクに股がり、気合を入れてキック一発ズドドン…
薄明かりの街を駈けぬけ、昇る朝陽を浴び「旅」がはじまる。

 たかがバイクと云うなかれ…
人生が代わる事も、あるんだゼ

 デザイン事務所近くの歩道に止め
てあった、真っ赤なタンクに銀色に
光る冷却フィン、そしてピカピカに
磨き上げられたクロームメッキのフ
ェンダー。それがSR500との始めて
の出会いだった。
 昭和53年の夏23才のワタシは日々
仕事に忙殺される毎日で、唯一休み
の日曜日にはレコードに針を落とし
ギターつま弾く、あてど無い日々を
過ごしていた。そんなある日、学生
時代の友人からSR500の中古だけど
いる?と連絡がきた。聞けば新しく
発売されるRZ250に買い替えるとい
う。即答したのは言うまでもない!
 あてど無い生活はSRを手に入れた
その日から180度変わってしまい、
仕事終えると即部屋へと戻り夜遅く
まで自分好みにSRをアチラコチラと
改造に熱中するのだった。
 不思議な事に機械をいじり回しあ
れこれ頭をフル回転させると、いつ
のまにか日々のデザイン・ワークも
アイデアがはかどり仕事が楽しくな
るのである。     
 満員の電車通勤は改造SRのテスト
走行に代わり、深夜におよぶ残業も
車渋滞の無い夜の国道をカッ飛ぶこ
とでマシン性能がレベルアップして
気が付けば、RZにのる友人とふたり
筑波サーキットを駆抜けるB級ライ
センスのレーサーになっていた。  

夜の甲州街道・青信号スタートで
0-400mナナハン・キラーでカッ飛ぶ

 フロントを18インチ・アルミHリムに下げてピレ
リーのファントマ履き、オイル・クーラー着けて
キャブレターのメインジェット350に上げ、エア
クリーナー取っ払ってエア・ファンネル装着。
ドカッティのコンチ・マフラー(サーキットでは
スーパートラップ5枚重ね)を着けエンジンオイル
PENNZOIL 10W-30。マグラの削り出しセパハン
では改造違反で白バイ捕まり罰金5回の勲章モノ。
  

 

マシーンと共に 風になる

 
いま思えば、22から27歳のヤンチャ
な時代を駈け抜けていた、若い無邪気
なワタシがそこには在た。そのころ、
気付いたことが在る。
 バイクに乗る人がよく言うことに、
「あたる風が きもちいい」と表現する
けど、ほとんどのバイカーが気付いて
いない。自分自身がマシーンと共に風
になっていることを… ナゼなら止まっ
ている空間を切り裂いて「風」になっ
ているのはマシーンと自分自身なのだ
から… 筑波サーキットの最終コーナー
を時速(風速)100kmで駈け抜けていた
とき、そのことに気付いたのだった。


 (Heart of Loneliness 孤独の旅路 2 につづく)