2013年7月25日木曜日

無人島キャンプ~その3

モクマオウのこと 
そして、カンカン・バーナーで「炭」作り

先の太平洋戦争でアメリカ軍は、激戦地となった沖縄を中心に、奄美を含む琉球の島々の焼け野ガ原になった海岸線に、防風林としてモクマオウの木の種、内陸側には成長の早いギンネムの木の種を空中散布して、その焦土の緑化を行った。
その結果、50〜60年と樹命の短い針葉樹・モクマオウの、南国に不釣り合いなトゲトゲしく寒々しい樹形の潅木が、戦後70年近くたった南の島々の海辺に乱立している。
モクマオウは、成長が早いぶん必要な養分を大地から貪欲に吸収するため、その樹木が根を張る周囲の表土には、他の植物はいっさい生息しない。まるでアメリカという国そのままの性格を成しているのだ。


それに比べ、アダンを中心とした自然の生きた海岸線の緑地帯は、ハマボウ、トベラ、モンパの木、蘇鉄(ソテツ)、クワズイモ、ガジュマル、オオタニワタリ、テリハボク、デイゴの木々など、共生を中心とした多様性に富んだ緑地を形成している。
そんな自然の緑豊かな海岸線には、テナガエビをはじめ小さなカワハゼや見知らぬ稚魚たち、鰻(ウナギ)の子どもや群れなすボラの稚魚たちが活生する、いのち豊かな沢が、海へと流れ出ているのだった。


そのような緑豊かな海岸線の砂浜には、大人の拳(こぶし)くらいの大きなムラサキヤドカリや、でっかいハマガニ(シオマネキ)が生息し、その海辺には大きなサンゴ礁が発達して、更なる多くの生態系を繁茂させているのだった。


それは大自然が長い時を重ねて「海」と「森」との「命」を繋ぎ合った、自然の原風景に他ならない。

シーカヤックで南の島々、その海岸線を旅していると、そんな大自然の「命の営み」の実態が、記号としての「文字や言葉」ではなく、自分自身の五感をとおした皮膚感覚の「体験」で理解できるのだ。




海辺の旅や、無人島の砂浜でのビバーク・キャンプでは、少しでもその原風景を取り戻そうと、モクマオウの小枝とその小さなマツボックリの実を、ガンガン燃やし続けている。




上記のモクマオウの歴史的解説では悪役のような紹介をしたが、無人島放浪キャンプにおいては、タープを張る支柱やサイドの補助枝として活用している。また硬い木質のモクマオウの小枝は、火持の良い焚き火の「薪」として、またカンカン・バーナーで作ったモクマオウの小枝の「炭」は、強力な燃料として重宝しているのだった。


カンカン・バーナーで「炭」作り

短く切ったモクマオウの小枝をガンガン燃やすと、その火力は強烈で、1mほどの火柱が立ち上る。縦(たて)に吊るした鰻(ウナギ)の蒲焼きだって可能?かもしれない。高額な市販の化石燃料ストーブ・バーナーや、あのハイスペック火力のMSRウィスパーライトよりもすさまじい、カメキチ・カンカン・バーナーのその火力をご覧あれ。
そうそう、着火について一言。もちろんアダンの枯れ葉や小枝を集めての、自然素材現地調達・着火もすばらしいのだが、「着火材」なるモノも平行して使うことを薦める。
大雨の中、しかも風ふく寒さの無人島では、マッチ1本からの技巧優先・哲学的価値観よりも、さっさと火を熾すことが最優先されるのだ。化石燃料系アレルギーの人には、自然素材のリサイクル「着火材」だって探せばあるのだから。

めんどくさいよ、雨風の中、ビショ濡れ小枝に火を熾すって。



 ファイヤー〜!

いかが
恐るべし モクマオウの燃焼火力と
カメキチ・カンカンバーナーの燃焼効率! 


さて、ここで  
カメキチ・カンカン・バーナーによる作りを紹介しよう。

上記の小枝が燃えている間に、親指くらいの太さのモクマオウ小枝をカンカン・バーナーの内径の長さに短く切り割っておく。薪を缶の縦に詰める場合は缶の高さの2/3くらいに切っておくのがベスト。

1;上記・ウナギ1本姿焼きの炎が収まって出来上がった火床・熾き火の上に、 
短く切り割った小枝を隙間なく詰めていく。


2;徐々に煙が立ち上り、炎が燃え上がってきたら、 
缶の下・三角の空気取り入れ口と、上部の燃焼炎排出口を 
一気に切り取った缶蓋(フタ)で塞ぐ。 
すると白い煙がさらにモクモクと立ち上ってくる。

3;熾き火の火力にもよるが15〜20分すると白い煙が収まり 
「炭」が出来上がる。



 4;下の三角・空気取り入れ口を塞いだままでも、隙間からのわずかな空気による燃焼で、 
小1時間ばかり炭火が燃え続ける。餅や魚を焼いたり、 
汁物を調理するのはこのタイミングがベスト 
炭が多すぎる場合は、取り出して砂の中に埋めれば消火でき、またいつでも炭として使えるのだ。


 5;炭の火力を上げるには下の三角・空気取り入れ口を開ける。 
炭は一気に赤々と燃え、300〜500ccの水が2〜3分でアッという間にお湯が沸く。


6;裏技として、炭火で焼き上がった魚を、その次の炭作りの煙で燻(いぶ)しておくと、 
2〜3日はハエもたからず常温(日陰)での保存が可能なのだ。

そんな「火遊び」に夢中になっていたら、いつの間にか、 
西の空に夕陽が沈んでいた。


明日も 晴れますように。





2013年7月24日水曜日

無人島キャンプ~その2


 島の 焚き火と飯づくり

その昔、キャンプのたびに4~5人の飯づくりのため、幾つかのクック・ストーブや焚き火道具を持ち歩いていた。 
20代バイク・ツーリングのキャンプサイトは、カートリッジを兼用するプリムスのランタンとクック・ストーブを始めとして、30代での車やカナディアン・カヌーのファミリー・キャンプでは、コールマン2バーナーにシングルマントルのガソリン・ランタンを輝かせた。 
30代後半に雪山に出かけMSR・ウィスパーライトをガンガン燃やし、40代にガッチリとシーカヤックにはまった時、マナスル121ストーブに小さな灯油ランタンと共に、多くの仲間たちと海辺の旅を楽しんだ。 
50代になり、仲間たちとのシーカヤック旅やサバニ旅では、ほとんど焚き火とマグライトで夜を過ごしていた。 
そしてこの2~3年、あの原発事故をきっかけに、独りでのシーカヤック旅にもどり、マグライトとローソク、そして昨年から空き缶をナイフで加工したカンカン・クック・バーナーを使っている。 


一人~二人分の調理バーナーとして、普通サイズのパイナップル缶より一回り大きなLigo/リゴのフルーツカクテル缶詰の空き缶がベスト。Ligoリゴ缶はラベルが紙製で簡単にはがれる。  
(紙ラベル以外の塗装缶は初期燃焼時に科学塗料及び有機溶剤による有毒ガスが出るので注意)。 
[カメキチ・カンカン・バーナー]の作り方
(1)まず、缶の上蓋をカンキリで完全に切り開け、中身を一気に食べるなり、ジップロックなどに移す。 
(2)ナイフで底の部分を三角に開け、空気取り入れ口&薪差し込み口をつくる(写真:参照)。 
(3)カンキリもしくはナイフで、缶の上部分に熱および炎の吹き出し口を、写真のように細かい間隔で開ける。 
(4)カンカン・バーナー用の薪燃料として、親指の太さくらいの乾いた長さ1mほどの小枝を3~4本拾い集め、ノコギリやナタで、空き缶の直径や高さの長さに切り割けておく。薪のくべ足しは、一気に火力を上げる場合は、缶の直径サイズの小枝を上から中へガンガン投げ込む。安定した小~中火が必要なときは、下の三角口から20~30cmの小枝を2~3本差し込む。 



一人の食事1回分なら、燃料の薪として、親指くらいの太さの長さ1mの小枝3~4本で充分事足りる。
たったこれだけの小枝で、魚を焼き、米を1合炊き上げ、みそ汁と1リットルのお湯を沸かし、残った熾き火で「炭」を作り、最後に炭火で、餅を焼いてお茶が飲めるのである。着火以外の燃料は、全て現地調達の落ちている「小枝」だけで済むのだ。 
カンカン・バーナーのおかげで、キャンプ・ファイヤー用の大量の薪集めも必要なくなり、必要最小限の炎で、夜の闇と星の輝き、火の温もりと月明かりの美しさを、楽しんでいる。 



砂を盛り上げた焚き火台に、潅木4本突き刺して、焼きアミの高さを調節する。 
「創意工夫」これ大切。  
ガソリンや灯油を始めとする石油系燃料および、それらのゴチャゴチャした燃焼道具からの解放は、せせこましいアスファルトの大都会から、一気に大海原へとシーカヤックで抜け出したような、開放感に値する発見なのだ。 
信州の川上村にて、孤高に生きる賢者の言葉を思い出した。 
「わたしは、孤独ほど仲のよい友達に会ったことがない。
孤独でいるときが、人は自分らしく、いちばん輝いている。
そして、その孤独を楽しむことができる者こそが、よい仕事を為す。」 

友よ、孤独で あれ。


[カメキチ・カンカン・バーナー]による「炭」作りと、鰻(うなぎ)の1本姿焼き?の秘技は、 
次回「無人島キャンプ~その3」にて公開予定~しばし待たれよ!


2013年7月21日日曜日

無人島キャンプ〜その1


島の夜明け

波の音で 目が覚めた。 
カヤック越しに空を見上げれば、遠く東の空が明け始めている。ピンク色の高い雲がしばらくしてオレンジ色に輝き、浜辺におだやかな風が吹いてきた。 
夜明け前の刻一刻と変化する空や海の色、その色を背景としてシルエットに見えるキャンプサイトとカヤックの道具たちを、時を忘れ飽きることなく眺めつづけ、浜辺に打ち寄せる波の音や、目覚めた鳥たちの啼く声に聞き入る。 
三羽のまっ白いアジサシが、左の岬から入り江を横ぎり朝日の方へ飛んでいった。



潮風そよぐなか、ヒンヤリとした砂浜をはだしのまま波打ち際まで下りてゆき、昨日の陽焼けした素っ裸の体を、朝のつめたい満ち潮にその火照りを浸す。 
インドのバラナシ、ガンジス川岸辺のガートで早朝に沐浴する人々の、昇る朝日に向かっての「祈り」の景色を思い出し、心の中で手のひらを重ねた。


カメキチ・カンカン・バーナー

空き缶をナイフで加工して、カンカン・バーナー(*1)を作る。缶のサイズに合わせて、小枝をナタで割り刻み、火を熾してミルクティをいれる。 
遠くの海と雲を眺めていたら、突然、右の方からタープのなかに、まぶしい陽の光りが差し込んできた。 

今日も太陽が輝く、暑い無人島の一日が始まる。 


*1~カメキチ・カンカン・バーナー:なんと、焼き鳥炭火焼きから鰻(ウナギ)の一本姿焼きも可能?な、空き缶ストーブを、次回「無人島キャンプ~その2」で作り方から使用方法まで詳しく解説予定、一人旅・放浪カヤッカー 目から鱗(うろこ)の必読の術、乞うご期待。


2013年7月5日金曜日

ヤドカリ・ハウスのこと 〜その2

YADOKARI HOUSE vol.2
ブーゲンビリア
南国・琉球の島に、梅雨明けと共におだやかな南西の風(夏至春風・カーチベィ)が吹いている。
空はどこまでも青く、ちいさな白い雲がゆっくりと北の方へ流れて行く。 
太陽の日差しは強く、樹々の緑はその濃さを増し、色とりどりの花々が競うように咲き乱れている。


このヤドカリ・ハウスの回りにはなんと、65年ものブーゲンビリアが大木となり、ブロック塀の上を龍の様な姿でこのちいさな平屋を囲んでいる。
ブーゲンビリアの赤紫の花が絶えることなく咲き乱れるため、一年をとおして、どの部屋の窓を開けても、この花たちが顔をのぞかせる。
また、横を通る小さな路地は、風に落ちた花びらが、赤紫の絨毯(じゅうたん)のように、敷きつめられているのだ。



行き交う子どもたちや女性たちは、花を踏まないように歩幅を変えて歩いて行く。 そんな優しさがもったいなくて、掃除をする気にもなれない。