源流ビバーグ
巨岩と渓谷
行けども行けども切り立つ崖と、行く手をさえぎる巨岩の渓谷だった。
40リットル/12~13kgのザックを背負い、大井川の源流へと路無き路を遡上していった。某フリーマガジンの源流渓谷釣り取材である。
編集者曰(いわ)く「場所によっては全身ズブ濡れの、泳ぐ覚悟で装備してきて下さいね。また、崖や岩場をよじ登るから荷物は少なめにお願いします」との事前警告どうり、完全防水パッキング、かつ2泊3日の野営ビバーグ装備総重量・10kg+食料&水2~3kgにてのパッキングとなる。
フレーム・テントを外し、久々にハンモック・テントと軽量ヒルバーグ・小タープのみでのビバーグである。ソロ用クッカーと着替えのウエアー類、それにスケッチ道具で40リットルのザックは、アッという間に満杯になってしまった。
標高800あたりから登り始めて1300mの源流まで遡上するという。夏場とはいえ標高1300mの夜、しかも沢の吹き下ろしの風を想うと、スリーシーズン用シュラフは欲しいところだが、すでにザックは容積オーバーゆえ、そこは着替え類・薄手のフリースとヒートテックの上下長物、厚手のフリース靴下などの重ね着と、コンパクトなシルクのシーツおよび、60/40の小タープを上がけにシュラフカバーの代用として対応することにした。
源流域は遡上すれば遡上するほど沢幅が狭くなりゴロタ石と巨岩の世界で、テントを張るような平らなところはまったく無く、岩と岩の隙間を利用・工夫するしかないのだった。そんな悪条件下でこそハンモック・テントは大活躍するのである。
岩と岩の隙間に太めの流木を突き刺し、中くらいの岩を当てがい角度を調整し、小さな石を隙間に差し込んで流木を固定する。
4m幅と高さ1.5mのスペースさえ確保すれば、たとえ足元に沢水が流れようが、デコボコのゴロタ石が転がっていようが、安眠間違い無しの極楽寝床パラダイス・ホテルの出来上がり。ただし、沢風の流れとテント内への風の進入には気を配る必要がある。
いくら熱い夏とはいえ、夜風に吹かれ続けると、それはそれで結構身体を冷やし肌寒く、下手をすれば夏風邪をひくハメになってしまう。蒸し暑い真夏の夜にタイマーをかけ忘れ、扇風機に一晩中当たって風邪をひくそれと同じことなのだ。
考えてみれば当たり前で、なぜならハンモックは、まったく風の通らない蒸し暑い熱帯ジャングルの条件下で暮らす人たちの寝具なのだから。
ハンモック・テントは、ただ吊り下げるのではなく、木陰や岩陰など風当たりを考え、創意工夫のスペース取りがそれなりに必要とされるのだが、風への対応さえ外さなければ、複雑なフィールドにおいて、快適この上ないパラダイス・ビバーグ・寝具として、多くの可能性を示してくれる。
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