2013年3月17日日曜日

風まかせ 漂流キャンプ ~その3

セーリング・カヤック無人島脱出作戦
 無人島2泊目、日曜日から月曜日にかけての真夜中にふと目が覚めた。

 先日(日曜日)の夕刻・陽が沈むまで、アウトリガーのベースとなるバウデッキ板と左舷リーボード、そしてアウトリガーの横棒セッティングまでは、勢いのまま一気に組み上げたのだった。そして、夜7〜8時には簡単な食事を済ませ、9時には早々と寝床に入った。ところが明日のセーリングに想いを馳せ、興奮してなかなか寝付けず、気を失い眠りについたのは、たぶん10時を過ぎていただろう。

 目覚めて、タープ外の 浜辺の明るさに驚いた。
 外に出て空を見上げれば、デッカイまんまるお月様が天の真ん中でドッカ〜ンと輝いていた。想えば明日火曜日の夜がド満月だったのだ。  
 時計を見れば、なんとまだ1時30分!マジかよぉ〜と、とりあえずションベンをしたらブルブルッと肌寒く、あわててカンカン・バーナーに火を熾し、お湯を沸かしてミルクティーをいれた。

  完全に目が覚め、月明かりに照らされて白く輝く「ヘロン」に、しばらく見入ってしまった。
 ついつい組み上げ途中の流木アウトリガーに目がいってしまい、気がついたら、無意識のうちに月明かりの下、ノコギリ片手にアウトリガー本体平板の舳先を、ギコギコギコと斜めに切り落としていた。
 しばらく夢中になり、アウトリガーが組み上がった頃には、月の明かりが薄暗くなり満月が西の空に沈んだ。そして東の空が薄青く明け始めていたのだった。
 さすがに眠気が一気に襲ってきたので、倒れる様に寝床に入り、そのまま気を失った。
 目が覚め、時計を覗くと朝の8時45分を指していた。
 枕元の風よけに使っていた小さめのタープをはずし、セーリング用の帆に仕立て直す。細引きやロープをとり回して帆柱にセットし、セーリング・カヤック仕様が完成したのは10時を少し過ぎていた。
 セーリング「ヘロン」を波うち際に運び、帆を上げ下げしてセーリングのセットアップをチェックしていたら、遠く沖縄本島の上空彼方からパタパタパタと軍用ヘリが飛来し、無人島上空で旋回をはじめた。

 思えばこの無人島は、米軍や自衛隊のヘリ離着陸・訓練場に使われていたのだった。オリーブドラブ色の機体からしてたぶん自衛隊のヘリだろう、島の上空を低空旋回や旋回上昇を繰り返している。

 浜辺に居る分には、文句はいわれないとは聞いているが、頭の上をバタバタバタと飛び回わられると、あんまりいい気持ちはしないし、多分、新米自衛官が操縦桿を握っているだろうから、落ちて来ないとも言い切れない。それにしても爆音がウルサい!タービン・エンジンのキィーンというジェット燃焼音まで聞こえるのだ。

 めんどくさいので、そそくさとベドウィン風キャンプ・サイトをテキパキ片付け、30〜40分後の11時30分には島を脱出したのだった。


 〜ここからは航路図・帰路(赤の実線)を参照〜

  無人島を離岸して帆柱上部の風見吹き流しを見れば右真横・北東の方から風が吹いている。島影に沿って北上し少しでも角度を稼ごうと、帆を下ろしたまま右に転舵しようとP.1の位置(航路図・参照)をガッツリ漕ぎ出した。
 ところが、アウトリガーのベースとなるバウデッキ板を抑えてある手前のテンションベルト(黒)がバタンとテンションが外れ、ゆるゆるになってしまった。このままでもバウデッキ板が外れることはないが、緩んだベルトが舟底で抵抗になってしまうので、細引きロープで応急処置しテンションを固定し直した。この一連の作業の際、右舷のアウトリガーがその機能を発揮しバッチリ安定した状態で風下P.2へと200〜300m流されていた。
 気を取り直し、風上に舳先を向け直し、岩場M2〜M3の間の砂浜が見えるP.3の位置目指して漕ぎ始める。
 左舷沖合いには一昨日の半分くらい白波が見え隠れしている。感じとして6〜7m/sの北東の風で、波高1〜1.5mといったところだろうか、気を引き締め、イラスト航路図の様な風と航路を頭の中に描いてイメージ・シュミレーションをいくつか繰り返した。
 10分ばかり漕いでP.3にたどり着いたが、目指す港の位置が帆柱の吹き流しの角度からして左真横9時方向の位置ゆえに、もう少し角度を稼ぐためしばらく北上することにした。
 P.3から漕ぐこと10分弱、真後ろに流れていた吹き流しの角度が左側に20度ばかり傾き、目指す港が8時方向に下がったので、ここぞとばかりに左舷リーボードを直角に下ろし、P.4の位置で、用心のため帆を半分ほど引き上げた。帆に風を入れたとたん、帆は裏帆に反転して舟は左舷に20度ばかり傾き、右舷の流木アウトリガーを少し浮かせた状態で、音もなくスゥ〜〜と走り出しした。
 おォ〜〜〜 帆走バッチリッ ヨッシャ〜!
 安定した帆走に、気を良くして帆を一番上まで、おそるおそる引き上げフルにした。
 見れば、流木アウトリガーが海面からほとんど浮いた状態で帆走し、スピードが上がった。ヨッシャアァァ~〜〜! と、思ったのも束の間、P.5の位置あたりで、さっきまで左舷側にピタリとしていたリーボードが、あれよあれよとグラつき始め、アッという間に前方が左に20センチほど開いてしまった。
 あわてて、帆のロープをゆるめ風を逃がしたところで、帆を下ろし、リーボードを固定していたクレモナ混紡ロープを締め直した。その間10分ばかり、6~7m/sの風と1〜1.5mの波の中で、流木アウトリガーがその機能を発揮し、風下へ流されながらも舟自体は安定して漂流していたのだった。
  リーボード固定部分を修正したあと、帆を半分だけ上げた状態でしばらく帆走し、リーボードの様子を確認しながら、帆を一気に上まで引き上げフルにした。
 一度緩んだクレモナ混紡ロープは、なかなかビシッと締まらず、もしくはリーボードがデカくて水圧を受けすぎるのか、ロープをいくら締めても少しづつ緩んで、やはり前の部分が10センチほど開いて来るのだった。やむなく足元ラダーにて左足をフルに踏み込み、舳先を左へ向けようとしても、センター部分のリーボードの抵抗がデカく、ラダーがほとんど利かない状態だった。
 右側に少しづつ舳先がずれていくため帆走速度が落ちてくる。そのため流木アウトリガーのアダン本体が海面に浸かると、アダン本体結び目部分の横枝などが抵抗となり、そこへリーボードのグラつきで前部分が開き舵作用の抵抗で、P.6〜7〜8の航跡の様に、舳先が右へ右へと徐々に向いてしまうのだった。そのため、5〜6分間隔の度に、右アウトリガー外側を2〜3回スイープして方向を修正したのだった。
 無人島を11時30分に脱出して、トラブルは多少あったものの30分ばかり風上に漕ぎ上がり、帆を上げ一気に港を目指し、比嘉の港スロープに舟を陸揚げし、積載道具を下ろして時間を確認したら12時45分を指していた。
 
 総括して、航路図〜P.4からP.8〜区間の帆による走行所要時間は約30分だった。途中〜P.5での10分ばかりの「リーボードのバラつき」がなければ、3時30分方向6~7m/sの横風で、波高1~1.5mの距離3kmを、ひと漕ぎもなしに20分前後で帆走、時速に換算すると9km/h( 4,8ノット)で帆走したことになる。

 今回の流木アウトリガー・セーリングテストでは、固定テンションベルトの外れと、リーボード固定のゆるみの2点が次回への修正ポイントとしてはっきりした。もっともテンションベルトに関しては、正しい掛け方を理解していなかったのが問題だった。反省しきり!
 リーボード固定のゆるみにかんしては、金具によるしっかりとした固定が必要であること。そして安いクレモナ混紡ロープに命を委ねるのは危険すぎるということが、ハッキリと理解できたのだった。

 近々、沖縄〜奄美の海を、セーリング・シングル・フォールディングカヤック「ヘロン」で旅するために、さらなるセーリングの精度を高めるぞぉ〜



4 件のコメント:

  1. 伊藤さん
    白ヘロン、実現したのですね。
    天然素材のアウトリガーも、ほんとうに美しいです。
    美しさには、手間を惜しまないこと、いや、手間を楽しむことなんでしょうね。
    キャンプサイトを作るとき、いつもちょっとだけ真似させていただいています。
    またどこかの浜でお会いしたいです。
    http://hatchi-no-moto.cocolog-nifty.com/8blog/2010/05/hare-wisper-3-5.html

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  2. これはこれは Hatchiさん 
    お元気ですか?
    ウィスパーと旅してますか?
    ことしもガンガン、ホールディングな旅しましょうね。
    いつかどこかの海で〜。

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  3. 画伯 どうも~
    先日の浮原 天気最高でしたね。
    その時話した紹介したい帆の件
    以前にブログで解説いれたことあるので
    良かったら確認されて下さい!
    http://kubagasa.ti-da.net/e4023696.html
    かなり身軽なセールですよ
    いつでも現物確認大丈夫です

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  4. クバさん 
    今度 奄美・カケロマを一緒に回れたらと想います。
    与路島と請島の間の ハミャ がカヤック旅での奄美一番の無人島です。
    与路島とハミャ間は潮流4〜5ノットの激潮ポイントですが、満干のタイミングさえ間違わなければOKですよ。
    こんど、ぜひ!
     

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