モクマオウのこと
そして、カンカン・バーナーで「炭」作り
先の太平洋戦争でアメリカ軍は、激戦地となった沖縄を中心に、奄美を含む琉球の島々の焼け野ガ原になった海岸線に、防風林としてモクマオウの木の種、内陸側には成長の早いギンネムの木の種を空中散布して、その焦土の緑化を行った。
その結果、50〜60年と樹命の短い針葉樹・モクマオウの、南国に不釣り合いなトゲトゲしく寒々しい樹形の潅木が、戦後70年近くたった南の島々の海辺に乱立している。
モクマオウは、成長が早いぶん必要な養分を大地から貪欲に吸収するため、その樹木が根を張る周囲の表土には、他の植物はいっさい生息しない。まるでアメリカという国そのままの性格を成しているのだ。
それに比べ、アダンを中心とした自然の生きた海岸線の緑地帯は、ハマボウ、トベラ、モンパの木、蘇鉄(ソテツ)、クワズイモ、ガジュマル、オオタニワタリ、テリハボク、デイゴの木々など、共生を中心とした多様性に富んだ緑地を形成している。
そんな自然の緑豊かな海岸線には、テナガエビをはじめ小さなカワハゼや見知らぬ稚魚たち、鰻(ウナギ)の子どもや群れなすボラの稚魚たちが活生する、いのち豊かな沢が、海へと流れ出ているのだった。
そのような緑豊かな海岸線の砂浜には、大人の拳(こぶし)くらいの大きなムラサキヤドカリや、でっかいハマガニ(シオマネキ)が生息し、その海辺には大きなサンゴ礁が発達して、更なる多くの生態系を繁茂させているのだった。
それは大自然が長い時を重ねて「海」と「森」との「命」を繋ぎ合った、自然の原風景に他ならない。
シーカヤックで南の島々、その海岸線を旅していると、そんな大自然の「命の営み」の実態が、記号としての「文字や言葉」ではなく、自分自身の五感をとおした皮膚感覚の「体験」で理解できるのだ。
海辺の旅や、無人島の砂浜でのビバーク・キャンプでは、少しでもその原風景を取り戻そうと、モクマオウの小枝とその小さなマツボックリの実を、ガンガン燃やし続けている。
上記のモクマオウの歴史的解説では悪役のような紹介をしたが、無人島放浪キャンプにおいては、タープを張る支柱やサイドの補助枝として活用している。また硬い木質のモクマオウの小枝は、火持の良い焚き火の「薪」として、またカンカン・バーナーで作ったモクマオウの小枝の「炭」は、強力な燃料として重宝しているのだった。
カンカン・バーナーで「炭」作り
短く切ったモクマオウの小枝をガンガン燃やすと、その火力は強烈で、1mほどの火柱が立ち上る。縦(たて)に吊るした鰻(ウナギ)の蒲焼きだって可能?かもしれない。高額な市販の化石燃料ストーブ・バーナーや、あのハイスペック火力のMSRウィスパーライトよりもすさまじい、カメキチ・カンカン・バーナーのその火力をご覧あれ。
そうそう、着火について一言。もちろんアダンの枯れ葉や小枝を集めての、自然素材現地調達・着火もすばらしいのだが、「着火材」なるモノも平行して使うことを薦める。
大雨の中、しかも風ふく寒さの無人島では、マッチ1本からの技巧優先・哲学的価値観よりも、さっさと火を熾すことが最優先されるのだ。化石燃料系アレルギーの人には、自然素材のリサイクル「着火材」だって探せばあるのだから。
めんどくさいよ、雨風の中、ビショ濡れ小枝に火を熾すって。
ファイヤー〜!
いかが
恐るべし モクマオウの燃焼火力と
カメキチ・カンカンバーナーの燃焼効率!
さて、ここで
カメキチ・カンカン・バーナーによる「炭」作りを紹介しよう。
上記の小枝が燃えている間に、親指くらいの太さのモクマオウ小枝をカンカン・バーナーの内径の長さに短く切り割っておく。薪を缶の縦に詰める場合は缶の高さの2/3くらいに切っておくのがベスト。
1;上記・ウナギ1本姿焼きの炎が収まって出来上がった火床・熾き火の上に、
短く切り割った小枝を隙間なく詰めていく。
2;徐々に煙が立ち上り、炎が燃え上がってきたら、
缶の下・三角の空気取り入れ口と、上部の燃焼炎排出口を
一気に切り取った缶蓋(フタ)で塞ぐ。
すると白い煙がさらにモクモクと立ち上ってくる。
3;熾き火の火力にもよるが、15〜20分すると白い煙が収まり
「炭」が出来上がる。
4;下の三角・空気取り入れ口を塞いだままでも、隙間からのわずかな空気による燃焼で、
小1時間ばかり炭火が燃え続ける。餅や魚を焼いたり、
汁物を調理するのはこのタイミングがベスト。
炭が多すぎる場合は、取り出して砂の中に埋めれば消火でき、またいつでも炭として使えるのだ。
5;炭の火力を上げるには下の三角・空気取り入れ口を開ける。
炭は一気に赤々と燃え、300〜500ccの水が2〜3分でアッという間にお湯が沸く。
6;裏技として、炭火で焼き上がった魚を、その次の炭作りの煙で燻(いぶ)しておくと、
2〜3日はハエもたからず常温(日陰)での保存が可能なのだ。
そんな「火遊び」に夢中になっていたら、いつの間にか、
西の空に夕陽が沈んでいた。
明日も 晴れますように。