嵐の中で
10年前の夏、奄美大島の南部・瀬戸内町のヤドリ浜で台風上陸のチャンスを待っていた。予報では比較的小さめの台風で、奄美直撃のコースを通過するとの事だった。
通過2日前からヤドリ浜キャンプ場で、シュロの木にカヤックをロープで縛り、それを風よけにしてすぐ脇にタープを張った。手首ほどの太さもある木の枝で60~70cmほどのペグを仕立て、芝に斜めに打ち込みタープとカヤックをガッチリと固定し、台風上陸に備えた。
実際には100km手前を台風は北上し、吐噶喇(とから)を暴風域に九州へと駆け上がっていった。とはいえ、台風である。大島海峡の太平洋側入り口に当たるヤドリ浜沖は、30~35mの強風と浪高10mの外洋のウネリが吹き荒れていた。
台風通過のまる2日、暴風雨の中、タープをたたく雨音のドラミングと、木々と電線の風切り音の凄まじい、ただ笑うしかない世界だった。インナーメッシュの中は、タープの星空の様な小さな穴のいたる所から、シャワーのように雨が吹き込みビショビショになった。雨水が溜まるとバスタオルやカヤックのビルジポンプとスポンジで排水作業に精を出しつつ、こんな嵐の中でタープ・キャンプしているバカは他に居ないだろうなと想うと、ただただおかしくて笑いがしばらく止まらなかった。雨が止むとここぞとばかりに、ただひたすら眠り込むのだった。
そして3日目の朝、アカショウビンの鳴き声に始まり、山鳩の鳴く声と小鳥のさえずり、カラスの声、そして最後は蝉(セミ)の大合唱に起こされた。
タープから出ると、アダンの向こう、海側から聞こえるズドド~ン、ズドド~ンという波音の響きにおどろき、あわてて浜へと駆け下りていった。
10mほどもある外洋のデッカいウネリが、サンゴのリーフ際で4~5mの荒波となって崩れ落ちているのである。
その美しさの感動のあまり、2時間ばかり波景色に見入ったあと、7~8時間かけてその荒波の様を、夢中になってスケッチしたのだった。
ヤドリ浜沖大波全図
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