2012年12月10日月曜日

2013年 新しい旅の始まり


 17年前、雑誌「アウトドアイクイップメント」の創刊を機に、シーカヤックの世界にのめり込んでいった。
 編集部の棚奥深くに仕舞い込まれていた、ファルフォークのフォールディング・カヤック[ベルーガ]を担いで、バラストを兼ねたキャンプ道具と水・約30kgを前後に詰め込んで、奄美のシーカヤックマラソン40kmを4時間10分で漕ぎきった。レースの翌日、反時計回りで加計呂麻(カケロマ)の周りに点在する5つの無人島を漕ぎ渡り、1週間かけて加計呂麻を一周した。
 その3日後、沖縄へと飛んで、知念の浜から久高島へ漕ぎ渡り、島を1週して南側の砂浜で2泊キャンプをしたあと、帰路途中のコマカ島を経由して知念へと戻った。
 それから1ヶ月後の8月の終わりごろ、今度は西表へと飛んで北西部海岸ゴリラ岩あたりの砂浜で、満天の星空の下で2回ばかり気を失った。
 それから約15年間、白いベルーガはわたしを色々な所へ連れて行ってくれた。旅で出会った多くの感動は、スケッチというメモ描きに姿を変え30余冊のクロッキーブックとして記録された。

 カヤックの旅を通して、絵の道具が整理され、ポケットに入る水彩絵の具とペンテルの水性ペン、それとクロッキーブックの3つになってしまった。以来、仕事のデザインワークも、描くイラストレーションも、この3つの道具でこなしている。
 そして旅のスケッチは、いつの間にか下書きがなくなり、ダイレクトな水性ペンによるドローイングが基本となり、一筆描きの駆け抜ける線が自分のタッチとなった。
 3年前の夏、とあることでベルーガのコーミング・キャッチの布地が、経年劣化のため組み立て中に裂けた。2度ばかり補修したがとうとうボロボロになり、波立つ中ではスプレースカートとの隙間から海水がジャブジャブ浸水するようになった。と同時にスターン・デッキのメイン・ファスナーの取っ手が壊れ、レザーマンのペンチ機能でなんとか挟み込んでスライドさせるはめになってしまっていた。15年共に旅を続けた「ベルーガ」もくたびれ果て、さすがに満身創痍の状態では島渡り・海峡横断は厳しく、セーリング・カヤックとして沿岸のライト・セーリング&パドリングだけで遊んでいた。
 沖縄カヤックセンターの仲村さんから中古艇ニンバス[ニアック]を手に入れ、しばらく乗っていたが、波圧に反発するリジットの固さになじめず、サバニレースやサバニ旅に気をとられ夢中になっていたこともあって、しばらくカヤックから遠ざかっていた。
 そうこうしているうちに、今年の7月上旬、琵琶湖北西部にあるフェザークラフト・ショップ「グランストリーム」の10周年記念ツーリング〜奄美・加計呂麻一周フォールディング・カヤック旅に飛び入りで参加させてもらった。その折にショップオーナーの大瀬さん推薦する新艇[ヘロン]を1週間ばかり借りてガンガン乗り回してみた。
 コクピットのホールド性は、ぶかぶか外人サイズのK1と違い、限りなく[ベルーガ]に近く小柄なわたしでもしっかりと膝でニーグリップでき、嬉しいことにラダーペダルの踵部分がフットバー固定式となっているため、踵(かかと)と膝(ひざ)、そしてその2カ所をグリップすることでお尻まわりのホールド性もアップし、踵・膝・腰の3ヶ所のボディーグリップにより、パドルでキャッチした推進力をロスすること無く100%船体に乗せることができるのだった。
 MSRウオータージャグ6リットルと4リットル2本の他に積載テストとして2リットルペットボトル8本、飲み水合計26リットルとキャンプ道具15~20kgを詰め込んだ。積載量はベルーガの1.5倍の積載能力があり、かつその積載状態でもベルーガの1.5倍ほどの巡航速度でガンガン進むカンジに驚いた。

 直感で「コレだッ!」と決めた。 
 加計呂麻一周フォールディング・カヤック旅の終わりに、大瀬さんにカタログに無いボディーカラーが白色の「ヘロン」を特注で頼んだ。船体の色が白の理由は改めて別項で話すとして、その理由を大瀬さんに伝えたところ、フェザークラフトの社長ダグ・シンプソンに直接頼んでみるとの事になり、わたしのワガママを了解してもらえることとなった。もちろん帆走用に、帆柱差し込み口の穴も船体バウデッキに設置してもらった。 
 来年から、2年ぶりに自分の新艇「ホワイト・ヘロン」白鷺・しらさぎ号と共にフォールディング・カヤックの自由な旅が、新たなスケッチの旅が、また始まる。 
 ガンガン漕ぐぞぉ~   
    ビュンビュン風を捕まえて 飛ぶぞぉ~!
 

2 件のコメント:

  1. カヤック復活宣言、おめでとうございます。やっぱ伊東さん、カヤックの旅はワクワクしますね。考えただけでドキドキするような旅を考えましょう〜。by ocean46

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  2. 無人島に漕ぎ渡り、しっかり時間をかけて、漂流物とキャンプ道具でセーリング装備を組み上げ、やがて吹く追い風を帆に受け、潮と風を抱きしめて次の島へと渡り歩く。
    そんなフォールディングなカヤック旅の全システムと出会えた感動を、スケッチというアナログな技で、亀の時間で記録していきます。「無人島への脱出」〜乞うご期待!

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