2019年7月31日水曜日

忘れ物

Out of the Blue

 2001年の夏の終わり 奄美の南部・瀬戸内町のヤドリ浜を出発し、20km漕ぎ進んで大島海峡・西側出口の無人島エニヤバナレに上陸し、満天の星降る天国の夜を過ごした。
 翌朝7時、エニヤバナレを漕ぎ出し北西7km先の曽津高崎を回り込んで、岬から北東32km先・奄美本島中部にある大浜海岸目指しその日トータル40km強を9時間ガッツリ漕ぎまくって、大浜にたどり着いたのは日没2時間前の午後4時ごろだった。
 ヒッチハイクで30分かけ朝仁(あさに)の自宅へもどる。そそくさとシャワーを浴び、カヤック回収に車で大浜に戻ったら、水平線はるか彼方にデッカい真っ赤な夕陽が沈むところだった。
 パイナップルのアイスバーを頬張りながら、刻一刻と虹色に変わりゆく夕空を潮風に吹かれながら眺めつつ、懸命に生きた充足の2日間に想いを馳せる。
 満ち足りた達成感に浸りながら、キャンプ道具とカヤック装備品を片付け、カヤックをルーフに乗せロープで固定し、旅の終わりを惜しみ、パドルのロックを外して車の後部席に投げ込んだ。
 片付けが終わり日没から1時間、浜辺の階段に腰を下ろし夕焼けの海と空を眺め、しばらく、そよぐ潮風にふかれた。頭にかけていたサングラスを手に取ろうと……あれっ? 
 車ヘと戻り、座席にもダッシュボードの上にも…サングラスが無い? 
 ん…!ふと屋根に積み上げたカヤック・デッキに目をやれば、置き忘れかけたサングラスのレンズに、真っ赤な夕空が映り込んでいた。 
 風に吹かれ、潮に流され、太陽に照らされた、充足の日々……
しばらくして、暮れなずむ頭上のコバルトの空には、いつのまにか星々が輝き始めていた。

 アァ〜 あの 充足の日々よ 再び!






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