昨年11月の、ブータン国王来日に際しての国会における国王歓迎会にて、感動的な挨拶と貴重なメッセージを伝えてくれた国王ジグミ・ケサル氏は、北陸の東日本災害地を訪れた際にも、子供たちを前にご自身の「龍」の話をなされていた。
人の心の中には、人それぞれ1匹の「龍」が宿っており、人は自身の善良なる心をもって、その「龍」を一生かけて育てなくてはならない。と
奄美大島生まれのワタシは、そんなこととはツユ知らず、幼い頃から現在に至るまで、海と川、野原や町中で、これでもかと遊びまくっていた。
泳ぎ、潜り、溺れ、歩き、走り、転び、ケガをくり返しては、また歩き出す。そして、その中で出会えた幾つかの感動を「絵」という楽書(らくがき)をとうして、ず~っと描きつづけ遊んでいるのだった。
そんなワタシでも小学30年生の頃、「龍」に出会ったことがある。
台風を描きたくて、台風上陸4日前に奄美へと渡り上陸3日前から、強い雨と風の中、野宿をくり返していた。そんな中、太平洋に面した小さな入り江の、とある海岸でのこと。
海岸線谷間に聞こえる地響きの音に向かって、外洋の強風に飛ばされる潮つぶてに打ち付けられながら小高い丘に駆け上がった。
眼の前40m下に繰り広げられる外洋7~8mの高波が、幅100m左右の岩高50~60mほどに切り立つ入り江の中で、天地左右、縦横無尽にズドドド~ズッドォ~ンと暴れ狂っている。手前の波打ち際には大人の握りこぶし2個分くらいの大きな玉石ばかりが堆積しており、波打ち際から一気に40~45度の角度で4~5mの高さまでその玉石ばかりが迫り上がっているのだ。
その波打ち際に押し寄せる5~6mの高波は、一気にゴオオォォォ~と音を立てながら玉石を押し上げ、返す引き波にてガラガラガラガラ~とこれまたドでかい音を入り江の谷間に響かせながら、切り立つ深い海へと玉石を引きずり下ろすのである。
くり返されこだまする谷間の地響きと、眼下に荒れ狂う高波は、龍玉のような透明感のある若草色の巨大なうねりで、まるでドでかい「龍」が入り江の中で暴れ回っている様なのであった。
打ちつける潮でずぶ濡れになりながらも、20~30分余り、その感動に立ちつくし巨大な「龍」を眺めつづけていた。そして、ある瞬間に、コレまで遊びつづけ描きつづけていた多くの海岸線の景色や、生き物たちが内包する今日に至るまでの悠久の時間が、連続性をもってフラッシュ・バックしながら光り輝き、自分の脳裏にひとつの時間軸の流れとしてまとまったのである。
沖縄、奄美がかつて「琉球國」と呼ばれていた意味、そして台風という巨大な「龍」の力によって育まれた多くの命の尊さを改めて認識した瞬間なのだった。
開けて本年〜2012年は「龍」の年。
今年が、日本という国、そして私たち個人の中に宿っているであろうそれぞれの「龍」が、自身の善良なる心で、光り輝く年でありますように。